Sunday, April 26, 2009

「Into The wild」

Into The Wild ショーン・ペン監督の「Into The wild」をDVDにて鑑賞。80年代、遅れてきたヒッピーみたいな青年の「森の生活」へのあこがれが実話を元に描かれていて、なんとも言えない後味の映画だった。何とも言えないというのは、つまり荒野でたったひとり餓死する主人公が案外悲惨でもないような気がしたからである。優秀な成績で大学を卒業し、親の期待に背いてドロップアウトし、放浪を続けてあこがれのアラスカでたったひとり自給自足の生活を果たした彼は、決して不幸ではなかったはずだ。直接的な死につながったのは、野生植物図鑑を見誤ってしまい、毒性のある野草を食べてしまったからであり、他人のせいには出来ない。その昔、70年代初め頃、年上のいとこが諏訪之瀬島で短い生涯を終えたことがあった。同じ高校の3年上だった彼は、成績優秀だったが、大学受験の前夜四国の寺へ僧侶になるといって出奔した。その後、インドへ渡り、中近東ではイスラエルのキブツで世界中から集まった若者と一緒に労働をし、サハラ砂漠ではベドウィンの民と生活を共にしたりした。そして、アメリカを横断し、日本へ戻ってからは北海道のコミューンなどを転々とする生活だった。丁度東京で貧しいバンド生活を送っていた僕の下宿へ立ち寄ってはゴダールの映画を一緒に観に行ったりした。カウンター・カルチャーの話などをポツリポツリとしてくれた物静かな顔を今でもはっきり思い出すことが出来る。そんな彼の訃報を電報で知らされたとき、とっさに、自ら命を絶ったのでは、と思った。その後、海で泳いでいた際に心臓麻痺で亡くなった旨を叔母さんからうかがって少しだけ救われた気がした。彼の生涯は短かったけれど、決して不幸だったとは思えない。身の回りのものだけ詰めたナップザックには、分厚いベルグソンの本がいつも入っていたっけ。