Saturday, June 28, 2008

”聞き手、鈴木惣一郎”

Rimg0006-3 やっぱり、近所の本屋にはなかったので、天神の丸善で「分福茶釜」を買った。先週ROVAで来福した小柳帝氏から、「こんな本出てますよ」、という感じで耳打ちされていたのだ。細野晴臣氏が「大事なことを”小声”で語った人生問答」、という帯のコピーも気になったが、”聞き手、鈴木惣一郎”というのにも惹かれた。10年ほど前、地元のFMで番組をやっていた時、小柳、鈴木両氏には大変お世話になりました。「モンド・ミュージック」の二人が、音楽にまつわる四方山話を(おもしろ可笑しく)東京から発信してくれるというコーナーで、なによりも僕自身が一番楽しみにしていた。ある時、細野氏へのインタビューがオンエアー用MDに録音されて送られてきて驚いたことがある。確か、”スウィング・スロー”というアルバムを発表した直後だったはずだ。勝手に、ホソノ氏=無口で気むずかしい、というイメージをいだいていたのがウソのように、面白い話っぷりにびっくりした。これはソウイチロー氏だから聞き出せた一種の「特ダネ」のようなものだと思った。堅い話も、軟らかい話も含め、ウマが合うというか、ホソノ氏がまるで愛弟子との会話を楽しんでいる風なのである。今回、活字になった二人のやり取りを読んで、漱石と百閒の師弟問答もこんな風だったのかも、などと勝手な想像をした。でも、帯にもちゃんと書いてあるように、二人はまず、「仲間」なのである。そこが、又いい。でなければ、ナンパとか、自慰、飲尿療法なんて話は出来ないはずである。文末にもあるように、次回作も期待しよう。

Sunday, June 22, 2008

平積みされていた「ショーケン」

Rimg0116 近所の本屋で、平積みされていた「ショーケン」を買ってしまった。このての本はしばらく経ってからブック・オフで買うのがセオリーなのだが、立ち読みをしている内にどうしても誘惑に勝てなくなった。GS時代、女性遍歴、大麻、黒澤明などなど、本人のナイーブなモノローグで語られている。でも、やはりこの人は、「傷だらけの天使」だな。あの破天荒に格好良かったタイトルバック。新聞紙を前掛けにして、やおら冷蔵庫からパン、トマト、コンビーフ、そして牛乳を引っ張り出して、ひたすら食うシーンだ。牛乳瓶のフタを手じゃなく、口でバゴっと中に押し込んで、おまけにピシャっとカメラに向かってぶちまける。真っ白になった画面に真っ赤な文字で「傷だらけの天使」とタイトル・ロゴが出るって寸法。ゴダールの「勝手にしやがれ」なんか霞んじゃうくらいアナーキーだった。本によると、このシーンは何をやるかまだ決めて無かったらしい。で、突然朝飯を食うことに決め、マルチェロ・マストロヤンニ主演のイタリア映画「最後の晩餐」をイメージしたという。ひたすら食い、かつセックスするという映画だ。そうか、フランスというよりイタリア好きだったのかな。でも、「アキラ」と「アニキィー」のモデルになったのは、実は「真夜中のカーボーイ」のダスティン・ホフマンとジョン・ヴォイトということらしい。そういえば、市川崑の「股旅」もよかった。尾藤イサオ、小倉一郎とのズッコケ渡世人ぶりが妙にリアルで。このあたりまでがショーケンで、次の大ヒットした「前略おふくろ様」あたりから萩原健一ということか。罪を悔い、四国のお遍路に出るのはきっと、萩原さんだろう。それにしても、これくらい振幅の激しい俳優って、近頃めっきり少ない気がする。

Monday, June 16, 2008

YABU ONE MAN SHOW

 YABUさんの個展のオープニング・パーティーへおじゃまする。場所は「エル・タジェール」というカフェ・ギャラリー。ギターの即興演奏をバックにライブ・ペインティングをやるという。ENOUGHの仲間と一緒に駆けつけると、会場は満員。
Rimg0041 さすが、YABUさんの人気は絶大だ。このスペースを運営しているのはサンチャゴさん。久しぶりの再会。彼は、今では全国的にも有名になった「イスラ・デ・サルサ」というラテン・ミュージックのイヴェントを毎夏能古の島で開いているアルゼンチン人だ。「今年は、場所を変えてもっと多様な音楽を紹介するイヴェントにしたい」と、相変わらずの笑顔で話してくれる。ビール片手に談笑していると、突然YABUさんからライブ開始のMCを頼まれる。事前に依頼されていたら遠慮したはずだが、突発的なオファーだとなぜか嬉しい。何も考えないまま「今夜のハプニングをみんなで楽しみましょう」みたいなことを喋る。パフォーマンスは「蝉」というユニットの岡崎氏のギターで始まった。すると、絵の具缶を混ぜ混ぜしていたYABUさんが、おもむろに真っ黒なキャンバスに白い文字を書きつけ始める。みんなの目は、もう釘付けだ。フェンダー・ジャズ・マスターの轟音が、筆からしたたり落ちる絵の具にディストーションをかけている。
Rimg0066 ここは、ひょっとして60年代のNY、それとも新宿のアングラ空間? 「予定調和」という退屈で苦痛なものへの異議申し立てとしての「ハプニング」はここ福岡ではドッコイ健在なのだ。それにしても、個展をやるたびにYABUさんの絵は変化する。期間中、ぜひ自分の目で確かめて欲しい。桜坂にある、まるで「傷だらけの天使」みたいなぼろマンションのアトリエでの新たな活動も期待しよう。

YABU ONE MAN SHOW
藪 直樹 個展
14-30 June 2008
12:00-22:30(Mon.-Sat.), 12:00-18:00(Sun.)
El Taller
福岡市中央区赤坂1-5-2 Albe 赤坂2F Tel.092-722-1650

Friday, June 6, 2008

焼き付けCD

Rimg0094 先週、NHKの番組で本のことが扱われていた。それによると、最近は「売り上げランキング」などを参考に購入する人が多いらしい。そのせいか、ランキング外で面白い本があっても、目立ちにく、売れ残ってしまい、結果として廃刊になることが多いという。大型店になればなるほど、売り上げ至上主義が幅をきかせるためかその傾向は強く、本好きのスタッフなんかは頭を悩ませているらしい。なんだか、困ったものである。ランキングされる本なんて、毎月出版される膨大なカタログからみれば、ごく一部に過ぎないのだから。
 僕の場合は、CDで似たような悩みを抱えている。organで販売するために、面白そうな新譜を見つけてオンラインで問屋にオーダーするのだけれど、10枚の内、「在庫アリ」は3枚くらいだろうか。旧譜にいたっては1枚あるかないかってところだ。新譜といっても、ランキングに登場するようなものではないのだけれど、店にゆけばあったりする。つまり、そうゆうCDは最初のプレス枚数が少なくて、全国の大型店などに行き渡った時点で、在庫切れといった状態なのだろう。なんだか、大量にプレスされる売れ筋CDのあおりを食っているような気がしてならないのだ。
 僕は、ランキングなんてマーケティングのひとつでしかないと思っている。いくらでも操作できるとまではいわないけれど、少なくとも参考にするくらいが関の山。これまで、どちらかというと、ランキングされているものはなんであれ避けてきたといっていい。なんだか「買わされている」ような気がしてならないからだ。どうせなら、自分で仕入れたネタをたよりにしたいと思う。それだったら、もしハズしても自業自得、勉強代だと思えばいい。もし、自分が信頼している人のネタならもっとありがたい。ハズれることは、とても少ないからだ。
 先日のENOUGHのイヴェントの際、grafの服部さんにあるお願いをした。grafがデザインした真空管アンプのお披露目でかけるCDを各々選曲しようというものだ。まずは、僕のほうから焼き付けたコンピCDを送り、それに呼応するように彼のCDが届いた。実は、僕には密かな確信があった。服部さんはトロンボーン奏者なのである。数々のデザイン・ワークをプロデュースするだけではなく、なんと、あの谷啓と同じ楽器を奏でるのである。一体、どんな曲を選んでくれるのか、「期待するな」というのは無理な相談である。で、結果は・・・、あまりの素晴らしさに1曲目から唸ってしまった。どの曲も真空管アンプにふさわしくアコースティックでジャジー、そしてもの悲しく、適度にアヴァンギャルドと、まさにいうこと無し。そのうえ、選曲リストをみると、9人中1人を除いて知っている名前がない。俄然、興味がわいてくる。こんなふうだから、音楽ってやめられない。当分の間、僕の焼き付けCDランキングの1位に輝くってわけだ。