Friday, August 20, 2010

"FISKAS"の魚スープが恋しい

Images 暑気払いにサスペンス映画でも、と思ったのか奥さんが『マジック』という若きアンソニー・ホプキンス主演のDVDを借りてきた。1978年制作で、共演がアン・マーグレットとあり、興味が湧いた。なにしろ彼女はぼくにとって初のピンナップ・ガールだったわけであり、映画のストーリーそっちのけで、そんなに多くない出演シーンに見入ってしまった。1963年の映画『バイバイ・バーディー』で、歌って踊れるセクシー・アイドルとしてデビューした彼女は、(青臭い中学生にとっても)「小悪魔」だったのだ。でも、同じ頃見た『ラスベガス万歳』が、相手役(というか主役)のエルビス・プレスリーが苦手なぼくとしては、まるで楽しむことが出来なかったこともあって、なんだか急に熱が冷めてしまった。なにしろ、シルヴィー・バルタンやカトリーヌ・ドヌーヴなんていうヨーロッパ映画の、もっと手強い小悪魔が出現してしまったのだから仕方がない。で、その後忘れていた彼女に思いがけず再会したのはマイク・ニコルズ監督『愛の狩人』。ジャック・ニコルソンとアート・ガーファンクルが大学生に扮した、アイヴィー・ルック満載のなかなかやるせない映画で1971年制作、ただし、観たのは1980年代、ビデオだった。アル中のもとセクシー女優という「汚れ役に、体当たりしている姿(クリシェで恐縮)」は、ちょっとした感動もので、案外いい年の取り方してるんだ、などと思った。そういえば、この映画に出ていたもうひとりのヒロインがキャンディス・バーゲン。『パリのめぐり逢い』や『魚が出てきた日』(ともに1967年)なんていうヨーロッパ映画で、知的できかん気なアメリカ女を演じた大人な女優さんで、「ヴォーグ」や「ライフ」誌で活躍した写真家としても知られている。ところで、ウィキペしてみたら、ふたりともにスウェーデン人だという。ちなみに、グレタ・ガルボ、イングリッド・バーグマンという往年のスターや、近年ではユマ・サーマンなどもスウェーデン人である。だからどうだというわけでもないけど、ストックホルム、しばらく行ってないなー。"FISKAS"の魚スープが恋しい。

Wednesday, August 11, 2010

アントニオ・ヴィターリ 展

Img 1800 目黒区民センターといえば、たしかぼくがいたバンドがそこのホールでコンサートを開いたはず。大学2年の時くらいか。なんとか録り終えた初アルバムを発売した直後の、いわばデビューコンサートみたいな感じだった。連日のように、大橋にあったポリドールのスタジオでリハーサルを重ねて当日にそなえたはずだが、肝心のコンサートのことはよく覚えていない。でも、大阪出身のカメラマンだったマネージャーのNARUちゃんと一緒に写真をコラージュして作ったフライヤーだけは記憶している。そういうものだ。
 そんな場所を40年振りに訪れたのは、アントニオ・ヴィターリの展覧会のため。organで知育玩具を取り扱い始めた頃、小柳帝さんからの耳打ちで、このスイス出身の素晴らしい彫刻家の木製玩具に出会った。といっても作品集だったのだが、それでも彼の作品の魅力に触れるには充分なほど濃い内容だった。キツネや山羊、象などの動物、赤ん坊を胸に抱いた母とそのファミリーなどが、柔らかなカーブで表現されている。是が非でも実物を触ってみたいと願った。でも、子供の玩具というものは、成長する課程で破棄されてしまうものがほとんどなので、簡単に見つかるものでもない。で、今回ようやく、その全貌に触れることが出来た次第。まさに「子供が初めて手に触れる玩具はこうであって欲しい」と思ってしまう。モチロン汚れちまった大人達も。ちなみに、ヴィターリの作品はすべて廃盤だったのですが、最近ドイツで動物パズル3種類が再発されました。
「クルト・ネフ + アントニオ・ヴィターリ 展」  2010年09月12日まで
目黒区美術館 :目黒区上目黒二丁目19番15号 電話 03-5722-9300

Friday, August 6, 2010

Coper & Rie

Img 1760-2 猛暑の中、ハンス・コパー展を見るために東京へ行った。ルーシー・リー初期のカップ裏面に並んだふたつのモノグラムを見て以来、あの大きな目をした男が気になって仕方がなかったからだ。よく知られるように、1950年代のコパーはリーにとってなくてはならない存在だった。しかし、リーに比べると日本でのコパーの知名度は低い。
 1956年、コパーはパリにブランクーシを訪ねた(あいにく不在で会えなかったらしいが)。ジャコメッティにも傾倒していたという。なるほど、あのちょっと奇っ怪なフォルムには観念的なものを感じざるを得ない。しかし、実際に作品を目の当たりにすると、様々な技法を凝らしつつ、ほとんどが口と胴体を持っている。まるで、彫刻に肉薄しつつ、ギリギリのところで器として踏みとどまっているかのようだ。そのことを物語るかのように、各作品のキャプションは単に"Bowl","Pot",そして"Vase"となっている。
 見終わって、図録を買おうとしたらTシャツを売っていた。一枚は作品の写真、もう一枚のほうはリーとのツーショット。チョット迷った末、後者に決めた。自家用に使っていた中古のロンドンタクシーの運転席から顔を出したコパーにリーが何か話しかけているショットだ。マッシュルームカットのコパーはカメラを見つめ、リーの視線とは交錯していない。まさに、陶芸の世界へ誘ってくれた彼女と別れ、自身の道を走り始めようとするかのようにも見える。

Monday, August 2, 2010

"NO SHIRTS, NO FOOTWEAR, NO SERVICE"

Img 1182 マウイ島のワイルクというひなびた町にある”世界に名だたる”パンケーキ屋の入り口の窓に「シャツを着ていないひと、裸足のひとはおことわり」の注意書きがあった。そこは町の食堂みたいな場所だった。一方、高級リゾート地カパルアにある店のスタッフが着ていたTシャツの背中には、そんな人でも「ノー・プロブレム」とあった。その一帯がリッツ・カールトン・ホテルの敷地なので、ラフな格好の滞在客を意識したメッセージかもしれない。
Img 1291-1 島全体が観光産業で成り立っているのだろうが、大衆食堂にドレスコードがあって、洒落た店のほうがユルイというのも不思議なものだ。映画『ティファニーで朝食を』のホリー・ゴライトリー嬢なら、さてどっちの店を選ぶだろうか?と思ったらなんだか可笑しかった。アメリカって国は色んな試行錯誤で成り立っている。