Thursday, April 17, 2008

リ・モデルがもうじき完成する

A-1 ホテルとホスピタルは、もともと同じラテン語から派生したらしい。それも、ホスピスが語源だとか。不思議だけど、合点がゆくような気もする。「土足、土足」と騒いでるようだが、僕はどうやら気兼ねなく安らげる住まいが欲しいのだろう。願わくば、必要な機能をキチンと備え、他者にも優しいホテルのようにリラックス出来る部屋、それがシャンブル三宅#602であってほしいもの。リ・モデルがもうじき完成する。正直なところ、かなりドキドキしている。4月25日からの5日間に、一体、何人のゲストが来てくれるのだろう。そして、どんな感想を持ってくれるのだろう。楽しみでもあるが、不安でもある。

Saturday, April 12, 2008

彼を介して知ったこと

Rimg1144 実際に土足で暮らしている人に初めて出会ったのは28年ほど前だろうか。アメリカに単身渡り、ヒッピーや、ブラック・パワー後のカルチャーに触れ、日本へ戻った彼はたまたま福岡でとてもヒップな服屋を始めたばかりだった。フランソワ&マリテ・ジルボーのジーンズや、フィオルッチなどの新しいブランドも扱っていたけど、ブルックス・ブラザースやコールハンというベーシックなアイテムも押さえた、当時としては革新的に刺激的なショップだった。お互いにセルロイド・フレームのメガネをかけていたことから仲良くなり、音楽やファッションの話をするようになった。ある日、彼のさほど広くないアパートを訪ねると、なんと畳にカーペットを敷き靴のままの生活をしていた。驚くと同時に格好いいな、と思った。「なんでみんな土足せーへんのやろ、オカシーとおもへんか?」、と大阪弁で気炎を上げる彼の強引なライフ・スタイルが正直うらやましかったりした。
 サーファーでもあった彼はその後郊外の海辺に南仏風の家を造り、ドーベルマンを飼い、流木で椅子を作ったりしながら少しずつファッションの世界から離れていった。僕や友人達がコンピューターを手に入れても、彼は頑なに拒否していた。そのうち、さしたる理由はないまま、お互いに会う機会は少なくなってしまった。
 今でも覚えているのだけれど、お洒落について彼はこんなことを言っていたっけ、「街を歩いている見知らぬ人にアピールしても仕方がない。お洒落とは、結局知ってる者どうしの暗号みたいなものだ」、と。確かに、ある友人がひょんなことで、いつもとは違った格好をしていて、それがとてもよく似合っていたとする。なにか、心境の変化があったのかもしれないし、新しい恋人が出来たのかもしれない、と想像してみる。でも、そんなことを思えるのは、その友人のことをよく知っているからにちがいない。
 多分、僕が土足に抵抗が無くなったのも同じようなことだと思う。突然、ある人から勧められていたとしても、果たして関心を示しただろうか。「ゲイの恋愛も、ストレートな恋愛も同じ。男と女と同じように、相手に優しく接するということには変わりはない」なんていうことを言ってしまう彼だったからこそ、僕はその気になってしまったのだ。「土足を選ぶ」ことが情報ではなく、リアルな選択肢になったのは、彼を介して初めて成り立ったのだと思う。
 4月25日から29日までの間、オルガン下の自宅部分を開放します。情報としてではなく、26年経過した土足生活の有り様をご覧いただけるはずです。

Monday, April 7, 2008

椅子と靴

椅子をお買いあげいただく際に、気を付けていることがある。例えば小柄な女性の場合などは足がちゃんと地面に着いているかを確認することなどもそのひとつ。当たり前のことのようだけど、案外御本人がそのことに無頓着な場合がある。多分、好きな椅子に座って少々興奮されているのかもしれない。特にイームズのシェル・チェアとエッフェル・ベースの組み合わせなどは注意を要する。おしり部分がくぼんでいる分、前方部が盛り上がっているので身長170cmの僕でさえ、ややもすると足が地面になんとか乗っかっている感じなのである。靴を履いているとOKなんだけど、ビルケンシュトックなんかを履いているとギリギリってところだ。ヒールがある靴を履いている女性には、できれば靴を脱いでもう一度座ってもらうことにしている。なかには、足をブラブラさせながらも購入を決める方もいるが、その際にはあえて口をはさむことはしない。キュートな女性が座る椅子にはオブジェとしての魅力があるのだから。
 
Pk22-1 しかし、住まいとなると事情が違う。キッチンの高さから始まり、コンセントの位置に至るまで、事細かなモデュールとの格闘となる。まさにコルビュジェが言った「住まいは機械である」という言葉通りなのかもしれない。おしなべて、装飾と機能がニュートラルな関係を持つことは意外に少ない。住まいとは、装飾を優先すればするほど使いにくくなる危険性をはらんでいるように思える。
 椅子好きの友人がポール・ケアホルムのPK-22という名作椅子で足に怪我をしたという。彼は「ケアホルムの椅子は日本人には向いていない」とまで断言した。聞けば、スリッパで歩いていて、PK-21の脚先にシコタマぶつけてしまい、血豆が出来たということのようである。確かに、あのPK-22の分厚いステンレスで作られた脚先はエッジも鋭い。さぞ痛かったことだろう。まさかスチール入りの安全靴とはいわないけれど、椅子暮らしが普通になった今、やはり靴履きのほうが自然な成り行きなのではないだろうか。