Friday, April 3, 2009

ダンテ・アリギエーリ

Rimg0624 フィレンツェ最後の夜、名残惜しげにテクテク歩いてゲストハウスへ戻る途中、サンタ・クローチェ教会の前を通りかかった。ミケランジェロやマキャベリなどが眠る古い教会はライトアップされ、壮大な大理石模様の建造物の向かって左にある彫像が漆黒の夜空にくっきりと浮かび上がっていた。町中至る所にある聖人や神話の彫像と違いなんだか生々しく、そのとんがった風貌が異彩を放っている。銘板を見ると、ダンテ・アリギエーリとある。13世紀に彼が書いた叙事詩「神曲」は、イタリアで初めて一般人が読み得たベストセラーといわれる。それまでの書物はラテン語で書かれ、一部の知識人しか理解できなかったのだが、ダンテはフィレンツェがあるトスカーナ地方の言葉で書き、後に活版印刷が発明され市井に広まることが出来たといわれている。確かそのことがきっかけとなりイタリア語というものが統一され、その後のイタリア統一へとつながることになった、と柄谷行人の本で読んだことがある。その時初めて「言葉の力」とは、実は近代国家(ネーションステイツ)形成にとって、「なくてはならない」重要要素なのだと初めて思い知ったわけである。ときたま「デンマークって何語なんですか?」という質問を受けることがあり、「もちろんデンマーク語です」と答えると、ちょっと意外な顔ををされる。一部の例外を除くと、近代国家とは独自の言語を持っていることが必須なのは知っていて良いことだと思う。それにしても、僕は大著「神曲」をいつか読むことがあるのだろうか?原題である「Divine Comedy」なら、イギリスに同名のバンドがあって一時ファンだったのだけれど。