Thursday, April 9, 2009

ハマクラさんとゲンズブール

Rimg0079-1 久々にぼんやりテレビを見ていたら、昭和歌謡の番組をやっていた。昔から苦手だった演歌はさておき、ポップス系はその時代の空気がみなぎっているようで、けっこう面白かった。ザ・ピーナッツのパンチの効いた唄が持つジャズやポップスへの見事な反応や、ムード歌謡と呼ばれた和田弘とマヒナスターズのモンド・ハワイアンぶりなど、戦後の日本人がアメリカ音楽へ急接近した様がうかがえる。シナトラにあやかったフランク永井の「低音の魅力」というやつも、柔らかなラテンリズムを伴い「口びる褪せねど」などと文語調で静かに歌われると、その工夫の程が案外悪くない。時代が少し進み、由紀さおりの「夜明けのスキャット」あたりになると、エンニオ・モリコーネやフランシス・レイなどのヨーロッパ調が現れてくる。途中、作曲家浜口庫之助にスポットを当てたコーナーがあり、西郷輝彦が「星のフラメンコ」を歌い出すと、「ゲンズブールみたい」と奥さんが反応したのが、案外的を得ているようで可笑しかった。ハマクラさんでとっさに思い出したのが伊東きよ子が歌った「花と小父さん」だ。フランス・ギャルにロリータ・ソングを歌わせたかのようなこの曲を当時テレビで見た高校生の僕は、そのフォーキーでちょっとペシミスティックなメロディにムラムラとした覚えがある。残念ながら、期待したその曲はオンエアーされなかったのだが、その代わりに珍しい映像が流れた。ハマクラさんの最後のパートナーで当時大映の女優だった渚まゆみだ。一瞬かいま見た彼女の面影には、サム・ハスキンスの「カウボーイ・ケイト」にも通じる60年代のコケットな女性像があった。それにしても、数々の色っぽいヒット曲を飛ばしたハマクラさんをセルジュ・ゲンズブールに比するのは強引だけれど、まるっきりの暴論でもないような気がするのだが。