Sunday, April 5, 2009

須賀敦子の「ヴェネツィアの宿」

Rimg0641 旅に出るときは、一冊文庫本を持ってゆく。今回はイタリアということもあり、奥さんが読み終わった須賀敦子の「ヴェネツィアの宿」をとっさにリュックに入れて飛行機に乗った。そんな気まぐれから選んだのだけれど、一旦読み出したら止まらなくなり、気がつくと旅の半ばを待たず読み終えてしまった。須賀は、まだ外国に出ることさえ困難だった1955年20歳代でパリに渡り(もちろん船で)、その後ローマやミラノで15年あまりを過ごしている。その間、イタリア各地を訪れ、もちろんフィレンツェにも立ち寄っている。そんなこともあって、自分が歩いている同じ路地の石畳は、多分彼女が歩いたときとほとんど変わってないだろう、なんてふと思った。ヨーロッパ各国はもちろん、アジアやアフリカから来た様々な友人との出会いや別れを通して、彼女が学んだ態度のひとつにこんな言葉があった。間違ってなければそれは「人を人種ではなく、その人として見ることが出来るか」というものだった。人種って何だろう、まして国籍とは?国境を越えて人や情報が交流する時代だといわれているけど、そんな事態は紀元前の大昔からあったはず。ヨーロッパはたくさんの戦争を経て、ようやくEUというパスポートなしの世界を実現できた。いつか、アジアにもそんな大きなコミューンが生まれる時が来るのだろうか。時の流れが寛容であればいいのだけれど。