Saturday, November 8, 2008

オキーフのお眼鏡

Rimg0180 今回のアメリカでのハイライトは、サンタフェ郊外にあるジョージア・オキーフが住んでいた家を見学すること。だからこそ、1ヶ月前に日本からファックスで申し込みをし、アビキューにあるオキーフ邸のすぐ近くのホテルに泊まり、朝9時半のツアーに臨んだのだ。それは、期待を裏切らない素晴らしい体験だった。アメリカにおいて初めてヨーロッパのコンプレックスを脱し、独自の絵画世界を切り開いた女性画家は、絵画以外の点においても妥協を知らなかった人だったのだ。その審美眼は着る服や、食べるものにも現れている。白か黒のコットンのシャツやワンピースはちょっとアーツ&サイエンスみたいだし、庭で育てた野菜類はもちろんオーガニック。1930年代の暮らしとは思えないほどの先進ぶりには驚く他はない。そして住まい。ニューメキシコ独特のアドビ様式の廃墟を気に入り、10年をかけて改築したアトリエ兼住まいには、今でも彼女の精神が静かに息づいているかのよう。僕は、瞬間的に禅の世界を思い浮かべてしまった。悟りというより、美しいものだけを執拗に追い求めたという意味合いだけれど。そんな中で、キッチンは様々な食器や鍋類が棚に並び、とても興味深かった。その時、熱心に見ていたウチの奥さんが「見て見て、ルスカがある!」と小声ながら興奮した様子で僕の耳元でささやいた。確かに、アラビア社の"RUSKA"と呼ばれているテーブルウェア・シリーズのディナー・プレートが数枚スタックされているではないか。我が家でも頻繁に活躍するこの皿が、オキーフのお眼鏡にもかなっていたとは、なんという嬉しい偶然だろう。