Thursday, November 20, 2008

ツァイ・ミンリャンの「楽日」

Rimg0417 店休日という事でDVDをまとめ借り、旧作4本で1000円なり。ツァイ・ミンリャンの「楽日」は二人ともぜひもので、リー・カンションの「迷子」はもともと「楽日」と一緒に併映される予定だった映画だったらしく、こちらも迷わず選択。トーマス・キャンベルの「スプラウト」は最近アメリカ好きになった奥さんの、そしてドキュメント「ポール・ボウルズの告白」はバロウズ関連で観たくなった僕のチョイス、とあくまで民主的。それにしても、久々の台湾映画、それもDVDとはいえ映画環境が貧しい福岡でツァイ・ミンリャンが観れるとは嬉しい。考えてみると、映画館に最後に足を運んだのはいつだったか思い出せない始末。DVDは便利でありがたいが、映画自体のダイナミズムは失われてゆくばかりなのだろう。実は、当の「楽日」が、そんな古い映画館の閉館日を描いたものだった。しのつく雨の中、だだっ広い客席には子供と、老人、それにゲイの男たち。足の悪いモギリ嬢が、ゆっくりゆっくり薄暗い階段を上がり、映写室へと蒸しパンの半分を届ける様子を執拗なロング・ショットでとらえる。せりふはなし、とまあ、観てない人には何のことだかわからないだろうが、観ていても「一体全体どうすりゃいいのか」と、とまどう。でも、これはツァイ・ミンリャンいつものやり口だ。最後の誰もいなくなった客席を、ただひたすら5分間も撮り続けたシーンがヴェネツィア映画祭で物議をかもしたのもうなずける。そんな強引な映画なのだが、見終るとようやく全体が俯瞰でき、その見事な映画術にあきれてしまうほかないのだ。一方、ツァイ・ミンリャンの秘蔵っ子俳優リー・カンション初の監督作品「迷子」のほうは、当初予定していた短編だったらもっと良かっただろうに、という感じ。そうそう、監督とその分身みたいな子役といえば、エドワード・ヤンの「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」でデビューしたチャン・チェンがいる。そして当然のように、フランソワ・トリュフォー作品でのジャン・ピエール・レオを思い出す。そういえば、ツァイ・ミンリャンの「ふたつの時、ふたりの時間 」にはそのジャン・ピエール・レオが出ているし、なんだか台湾映画とフランス映画が、僕の中では入れ子状態になっているようだ。