Friday, March 12, 2010

As is

Img 0184 パリでお世話になってるモダン家具店のピエールさんが、凄いコレクターが近くにいるから紹介しようか、と言ってくれた。ところが、あいにく今日は撮影があっていて、モデルやカメラマンそれにロシアのマフィアもいるヨ、とイタズラっぽく笑った。初対面だと構えてしまうに決まっているから、かえって好都合だと思いお願いすることにした。歩いて5分といっていたけど、最近足を痛めてしまい、杖をつきながらの彼と一緒だからか、けっこう歩いた気がした。着いてみると、雑然としたガレージみたいなところだった。フニャっと曲がったアルミ椅子を指さし、スタルクだとつぶやいた。奥に進むと、古びた壁一面に布袋(実はすべてセラミックで、誰それの作品らしい)みたいなものがかかっていて、その前に映画「トラフィック」に出てきそうなオモチャみたいな車が置いてある。ちょうどランチタイムなのか、化粧をした女性や、スタッフがプルーヴェのスタンダード・チェアに座ってお昼を食べている。黄色でかなり塗装が剥がれているのが5、6脚、無造作に置いてある。座っている人達は、この椅子がマニア垂涎の的だと分かっているのだろうか。すると、黒いスーツを着た2人連れのうちの1人が、突然話しかけてきた。「向こうにある椅子を見たか?あれは、とても珍しいフィリップ・スタルクの椅子だ」と言っているようだ。ロシアン・マフィアは椅子の買い付けに来たのだろうか?オーナー氏は「自分はディーラーではない。すべて見つけたときのままの状態である。リペアなどは一切しないのが主義である」、という旨をくりかえし説明してくれた。僕も"As is"が好きなので、まったく同感である。部屋のあちらこちらに見たこともないオブジェが散らばり、棚には資料や本がギッシリ。パリには色んな人がいるもんだ。次回は、ゆっくり会う約束をしておいとました。