Wednesday, March 3, 2010

「音のある休日」#19

Mulatu 「ニューヨークーアジスーロンドン」 ムラトゥ・アスタトゥケ
 エチオピアのジャズ、それも1960〜70年代に録音された音源である。様々な楽器をあやつるファンキーで土着的な演奏が、摩訶不思議な雰囲気を伝えてくれる。
 ロンドンやニューヨークへ渡り、当時最先端だったジャズやラテンを独自に吸収したはずなのに、彼のサウンドはなぜかオリエンタル。西洋音階から「ファ」と「シ」を抜いた「ペンタトニック」と呼ばれるメロディーは、我が演歌にも通じるもの悲しげなムードを醸しているようだ
 アフリカからアメリカへ連れてこられた黒人が生みだしたジャズ。それが逆輸入され、ふたたび現地の音楽と混交する。その時、起ち昇るルーツにはドキリとさせられる。
(西日本新聞 2 月 28 日朝刊)