Wednesday, February 18, 2009

アールトのNo60

Rimg0148 スツールが好きだ。椅子から背もたれや肘置きを無くした、そのシンプルさがいい。そのくせ、隅に置けない独特の存在感はちょっとした彫刻にも負けない。力があるデザイナーは必ずといっていいくらいスツールを作っている。コーア・クリント、ハンス・ウェグナー、ポール・ケアホルム、チャールズ・イームズ、シャーロット・ペリアン、柳宗理など数え出すときりがない。そんな中でも、アルヴァー・アールトの三本脚のスツールの簡素な美しさは格別だ。最近家庭画報社から出た『北欧インテリア』というムック本に掲載されているI邸を見て、そんな思いを強くした。北欧と和がマッチしたリビングのサイドボードに寄りそうようにたたずむNo60。色は蜂蜜色に経年変化し、突き板の合わせも古い形状で、1950年代のものだと思う。このスツール、実はつい先日organからI邸に嫁に行ったもので、接合部も今ではほとんど見ることもなくなったマイナスネジを使っている。そんな細かいことがなんだかうれしいのである。必ずしもフラットではない床の為に考案された三本脚や、安価さを考慮したノックダウン方式など、先進的なメッセージが込められたこのスツールがデザインされて多分60年以上の歳月が経過しているはず。その間に形そのものは継承されていても、細部は変更されているだろう。「時代は、実は、少しづつしか変化しない」、そんなことを小さなマイナスネジは物語っている。