
装飾美術館では "MOBI BOOM" と題して、1945-1975年フランスの、いわゆるミッド・センチュリー・モダン展をやっていた。なにしろ、その時代のフレンチ・デザインは一般的にほとんど認知されていないのだから、これは嬉しかった。思えば80年代だったか、ジャック・タチの『ぼくの伯父さん』を観て、フランスの家具ってなんてヘンテコでカッコイイんだろー、と思ったのが最初。その後、パリへ行く度に、『2001年宇宙の旅』のオリヴィエ・ムルグによる近未来な椅子や、ピエール・ポーランの洒落たデスクなど、レアールの近く、ティケトンヌ通りにあった「シェ・ママン」という店で、随分夢中になって探したものだ。で、こうやって一同に集められた家具を見ると、やはり独特だ。ガーリッシュのプラスティック椅子にしても、イームズの完成されたプロダクト感とは違って、フォルムがずっと自由なのだ。アノニマスな美しさではなく、作家のデッサンをそのまま形にしてしまったような楽しさやユーモアが感じられる。だからなのか、フランスの家具は世界商品としては流通しなかった。というか、もともとそんな気もなかったのかもしれない、などと思ってしまうほど。それを物語るのが展覧会図録の表紙。アラン・リシャール、ロジェ・タロンをはじめ、コンテンツは素晴らしいのだが、これではやはり誤解されてしまいそうだな。