Saturday, February 20, 2010

Donostia =San Sebastian

Rimg0336-1 サン・セバスチャンへ着いたのは夜10時を過ぎた頃だった。ビアリッツからバスに乗り、右に漆黒の海岸線を見ながら、1時間半くらい走っただろうか。バスターミナルで降り、タクシーを捕まえ、予約していたホテルへチェックイン。旧市街の入り口近く、ビルの3階フロアにあるペンションである。おそらく夫婦なのだろう、笑顔でレセプションをする小母さんと、重い荷物を運んでくれる伯父さんの、傍目にも仲が良さそうな様子がありがたい(夜遅く着き、あまり愛想の良くないナイト・ポーターに出会くらいツライものはない)。さしあたって必要なものだけをトランクから取り出し、とりあえず外へ出る。目的はただひとつ、バル。福岡にも最近チラホラ出来たバルっぽい酒場へ足を運んだものの満足できず、ここは本場へ乗り込むしかない!と、いうわけである。あらかじめ、見当を付けてはいたものの、狭い路地に点在するバスク語の看板をたよりに探し当てるのは容易ではない。気温は多分零下、海風が肌を刺す。ようやくたどり着いたのは「Goiz-Argi」という評判の店。すでに店内は満員だが、旅人は躊躇しない。「これだけは覚えておかねば」、と頭にインプットしてきた地ワインの「チャコリ」をオーダーし、目に鮮やかななタパスやピンチョスが並んだカウンターににじり寄り、やみくもに幾つかを指さして所望する。それにしても、このなごやかな雰囲気は何なんだ!常連、旅人を問わず次々に小皿をつまみ、コップを空けてゆく。サクッと飲んで去る人もあれば、延々とおしゃべりを続ける人もいる。カウンター内では、店主とおぼしき貫禄の伯父さんと、笑顔で客をもてなす小母さん(こちらも、まちがいなく夫婦と見た)が、頭の高さから小さいコップめざしてたえまなくチャコリを注ぎ込んでいる。まるで日本の立ち飲みが焼鳥屋、それに江戸時代の鮨屋と合体したかのような庶民的バイタリティにあふれている。おかげで、その日からの3日間というもの昼間からいろんなバル通い。最終日にマルシェの中を土産の生ハムを物色していると、「オーラ」というスペイン語の挨拶と共にポンと肩を叩かれた。振り向くと、そこに「Goiz-Argi」の店主の笑顔が在る。これで僕もいっぱしの常連だ。