Sunday, June 24, 2012

オッと、これは、どう見てもイスラム世界である。

Img 4723 買い付け旅では観光らしい観光をすることはないのだが、今回はリスボンから列車で 1 時間ほどにあるシントラという所へ行ってみた。前々から気になっていたムーア人の古城があるからである。さて、謎に満ちた彼らの足跡はいかに?
 ムーア人のことで印象に残っているのは『トゥルー・ロマンス』という(またまた)映画。デニス・ホッパー扮する警官がクリストファー・ウォーケン扮するマフィアの親玉に向かって「その昔ムーア人達がお前の祖先とファックしたおかげでイタリア人は黒髪と黒い目になったんだ」と罵倒してあっさり撃ち殺されるシーンである。そしてもうひとつ、随分前に『モーリス』という映画がヒットした際、イギリスに多いモーリスという名前の語源がムーアであることも。
 ムーア人がイベリア半島を席巻したのは 8 世紀くらい。イスラム化した北アフリカのベルベル人である彼らは、西欧に先駆けた様々な知恵を携えていたようだ。たとえば星々を観測して方角や位置を知る方法は、砂漠を交易する民として不可欠であり、それが航海術として地中海を帆船で自由に交通することを可能にしたはずで、ジブラルタル海峡を渡るなんてオチャノコサイサイだっただろう。その後、そんな先端技術を利用したポルトガルが世界に先駆けて、いわゆる大航海時代に乗り出す下地ともなったと考えられている。なにせ、ローマ帝国はまだガレー船という人力でオールを漕いでいた時代、イスラムのほうが断然進んでいたわけである。とまあ、ヨーロッパが好きな割には、西欧からの視点による歴史観に少々異議がある身として現場検証的な興味もあったのだ。
 王侯貴族の城館や金持ちの別荘が点在する静かな山間の町シントラは、イギリスの詩人バイロンをして「この世のエデン」と言わしめたらしい。坂道をしばらく歩くと、「ムーアの泉」があった。オッと、これは、どう見てもイスラム世界である。