Friday, January 15, 2010

エリック・ロメール

Rimg0021-2 エリック・ロメールは生涯で25本の長編映画を残したが、観ることができたのは17本。最初の取っつきにくさが去り、好きになってしまうとほとんど中毒になった。初見は1982年に制作された「海辺のポーリーヌ」。「喜劇と格言劇」と呼んだシリーズの3作目。ヴァカンスを舞台に、延々と続くおしゃべりと日常のささいな出来事を、たまたまそこにカメラがあったかのように一見無造作に追ってゆく。それまで観たどの映画とも違うフランスだった。その後さかのぼって観た「六つの教訓話」シリーズの中の「モード家の一夜」では、煮え切らないジャン・ルイ・トランティニアンに我が身を置き換え、「クレールの膝」のエロティシズムにドギマギした頃にはすっかりロメールの術中にはまっていた。忘れられないのは1984年の「満月の夜」。ポンパドールがお似合いだったパスカル・オジェの実像さながらに不安定な様子と、エリ&ジャクノのキュートなエレポップ。丁度フラットフェイスのアルバムを作っていた時期と重なり、フラジャイルでルナティックだったあの時代の記憶と符合する。インディペンデントな動きが活発化した80年代、インディビジュアルな映画も元気だった。100才過ぎても、映画撮っていて欲しかった。