Saturday, January 5, 2008

ロクヨン

ロクヨンが好きだ。といっても、焼酎のお湯わりのことではない。正確には60/40、コットン60%にポリエステル40%。60年代にアメリカのアウトドア・メーカー、シェラが開発、製品化したマウンテン・パーカーの素材のことである。それまでにはなかった、バックパッキングにもOKという全天候型ツールを提案したわけで、日本を含め世界中で大ヒットした。 

 でも、実際にはほとんどが街歩きに使われたのかもしれない。記憶をさかのぼると、70年代、雑誌ポパイで、ヘリンボーンのジャケットとフランネル・パンツの上に羽織るスタイルが紹介されていて(1)、その組み合わせの妙に唖然としたものである。アーバン風アウト・ドア・スタイルというわけだ。でも、まねをしても、なぜかしっくりこない。街には背広の上にパーカーを羽織ったサラリーマンがたくさん闊歩していた。そうして、僕はそのパーカーの存在をすっかり忘れてしまった。
 
 ところが、ここ十年ほど、このパーカーは、買付旅行にはなくてはならないギアになっている。突然の雨にもフードをかぶれば傘なんていらないし、極寒でも下にフリースを着れば大丈夫。おかげで、過去の買付写真を見ても、いつもシェラ姿。4色持っているのでローテーションはしてるけど、たまには洒落たジャケット姿で行きたいと思う。しかし、いざ出発当日になると、やっぱり着慣れたパーカーを選んでしまう。転ばぬ先の杖、というわけだ。

 
Rimg0144-1 もうひとつ、60/40生地で好きなのが、ノース・フェイスのダウン・ジャケット。ヘビー・スモーカーとしては、ナイロン素材だといつウッカリ穴を開けないかと心配だし、なによりも良い具合に生地が馴染んだ、いわばパティーナとでも言いたいようなユーズド感が好きなのである。ただし、サイズが大きくて困る。メンズのSならサイズとしてはちょうど良いのだけれど、アームホールがでかく、なんだかワンダーフォーゲル部みたいに本格的すぎる気がしてしまう。で、ある時見つけたレディースのL。ダウンの量もあまりパンパンではなく、全体にスリムに仕上がっている。ちょっとくすんだブルーも、昔なら二の足を踏んだに違いないが、今ならOKである。前合わせが女性向けに右なところだけが難点だけど。
 
 それにしても、温暖化の影響なのかこのところダウンを着るほど寒い日は少ない。どうかすると、1月か2月に2,3回着ただけで押し入れにしまってしまうようなこともめずらしくない。でも、年末の寒波到来でとても重宝させてもらった。30日のパーティーにも着ていった。久しぶりに会う友人達と過ごす時間には、なつかしい60/40の素材がピッタリだったと思う。友情も服もスタンダードが一番だ。今年も一年、息災にゆきたいもの。


(1)マガジンハウスのスタイリスト北村勝彦氏によるコーディネイトは、当時「ワイルド・シック」などと呼ばれ、その後、原宿に出したセレクト・ショップ、「リトル・アイランド」はあこがれの店だった。モデルも彼自身がやっていて、かっこよかった。