Sunday, March 23, 2008

土足を選ぶ

Build-1 このビルを建てた25年前、僕はまず靴のままの生活を考えた。映画で見る西洋風の暮らしにあこがれていたのだろう。でも、理由はそれだけでない。外国人の中には靴を脱ぐスタイルを実践している人もいる。肝心なことは、その人なりのライフスタイルを選択できるほうがいいということだ。
 具体的な話をしよう。友人のマンションの玄関ドアを開け、狭い空間で「よいこらしょ」と靴を脱ぐときの何とも言えない時間。下駄箱に入りきれなくなり散乱している靴。それなりにお洒落をしてきても、靴を脱いでスリッパ姿になることでご破算になってしまうやるせなさ。せめて、我が家のゲストにはそんな思いはかけたくない、と思った。当然、雨の日などの汚れは気になる。でも、実際にはドア・マットで少し念入りに靴を拭くことで解消される。それに、いろいろな靴に踏まれることでフローリングがいい感じの実在感を帯びても来る。掃除もまめにやるようになる、と、まるでいいことずくめではないか。モチロン、始終靴というわけではない。夏はビーサンや裸足もあり。なんだか、少し自由になった気がしたものである。
 大切なことは、装飾ではなく、自分らしい住み方。いかに洋風な意匠を凝らしても、旧来のスタイルにとらわれていては仕方がない。それは、「靴の生活」というものを(ただし、足音は静かに)実行したことで、考えていたよりはるかに快適であったことで実証済みだ。そこで、ヴァーチャルではないリアリティを持った環境を模索するために、僕は様々なヴィジョンを持つスタッフと一緒に実践に移すことにした。自分にとって「今が充分なのか?」、という意味を込めたENOUGHというプロジェクトである。
  さしあたって、4月25日から始まる「デザイニング展」への参加を決めている。そこでは「靴の生活」をめぐる様々な試みが提案されることになるはず。どうぞお楽しみに。