Sunday, May 10, 2009

レースのようなすきま

Rimg0002-3 ENOUGH ROOMでの李さんの料理イヴェントに駆けつけたのは3時過ぎだった。当日の「レモン懐石」コースがとうに終わっているのは承知だったが、後半のコーヒータイムに間に合えばいいな、と思っていた。ドアを開けてみると、普段訪れる時のがらんとした部屋とは打って変わった様子に唖然とした。なんと、女子ばかりがわんさかといる。予約だけで満員なのは知っていたけど、実際目の当たりにすると、自分の居場所さがしに苦労するほど「女の園」化している。仕方がないので、ベランダでタバコを吹かしていたら、李さんが揚げたての「春野菜の天ぷら、レモン塩で」を油紙に入れて運んできてくれた。アツアツを冷えた白ワインでいただく。野菜の甘さが旨い。ふと、牛島君が「エクリチュールについて、分かりやすく書いてあります」といって貸してくれたロラン・バルトの「表徴の帝国」の一節を思い出した(実際、前半は分かりやすかったが)。それは、西洋のフライと日本の天ぷらとの違いについてである。フライが持っている重い衣からほど遠く、天ぷらとは「レースのようなすきま」、もしくは「空虚な表徴」であり、魚であれ野菜であれ、「手つかずの生のままから生まれるすがすがしさ」をそなえているらしい。確かに、野菜の色が透けて見えるし、食べると素材の味がしっかり感じられる。さすが日本好きのフランス人はうまいことを言うもんだ。それ以上に、李さん自身もしごくさっぱりした人なのだから、天ぷらもストレート味だったのだろうか。出来れば、レモンステーキもいただきたかったと思う。