マルコ・ベネベント / ミー・ノット・ミー
ある時はキース・ジャレットのように静謐なソロ、そしてある時はロック・フェスティバルのような轟音。マルコの弾くピアノは振幅が大きい。一見、即興演奏のようだが、実は緻密な構成に基づく演奏は、ドラムとのアンサンブルから生みだされるという。なるほど、一体となったリズムがユニーかつ新鮮なフレーズを奏でている。
本来ピアノが持っている打楽器的な機能の再発見。そして、それをジャズやゴスペル、ロックへと適応させることで最新の音楽へと昇華させる可能性。センチメンタルなピアノのメロディに寄り添うように、時折もれ聞こえる鼻歌のようなハミング。ふと、グレン・グールドを思い浮かべてしまった。
(西日本新聞8月9日朝刊)