初めてヴェトナムへ行った。社会主義国だが、中国と同じように開放政策を実施しているので、アメリカや日本の資本も入っている。目抜き通りにあるルイ・ヴィトンがやけに目立つ。ベトナム戦争まではサイゴンと呼ばれていたホーチミン市は人口500万という大都市。公共交通機関がバスだけとあって、すさまじい数のバイクが庶民の足となっている。自家用車はピカピカの高級車で、他はとにかくバイクだらけ。そのうえに大きな交差点やロータリーには信号機が少なく、外国人にとっては決死の横断となる。ところが、彼らはあわてる風もなく、車やバイクの間を縫って器用に横切ってゆく。僕らは、戦争中、アメリカ軍の情報センターだったREX HOTELの前にある国営デパート3Fのカフェから、そんな光景をアイス・コーヒーを飲みながら飽きることなく眺めていた。コツはどうも「あわてず、騒がず、悠然と」、のようだ。国営デパート内にあるスーパーのクローク係のおばさんはまったく愛想なし。モチロン、僕らは、そんなことはお構いなしにフォーを食べ、汗だくになりながら、路上に座ってコーヒーを飲む人々をかきわけて一日中町を歩き回っていた。