Saturday, June 27, 2009

共有した場所

レニ・ルーフェンシュタール ジャン・ヴィゴ賞を受賞した「明るい瞳」というフランス映画をDVDで観る。見終わって、特典映像を覗くと、監督ジェローム・ボネルのインタヴューだった。映画後半の舞台となった場所について「何故ドイツを選んだのか」と質問されたとき、彼はこんな主旨のことを言っていた。「言葉が通じないところなら何処でも良かった。ただ、ここはドイツとフランスお互いが共有した場所だから・・・」と。舞台となった場所は映画の中では特定できないが、僕は勝手にアルザス地方を想像した。長い間ドイツとフランスで領土の獲得競争が繰り広げられ、普仏戦争や第二次世界大戦のフランス降伏に伴ってドイツに返還されたが、戦後はフランスが再占領し現在に至っている地域だ。いわば因縁の場所を、そんな風にいってしまうのがとても印象に残った。今でも世界中に「紛争地」と呼ばれる場所がたくさんある。言葉や文化が異なる他者同士が混在するところだ。お互いが排他的になりがちな場といってもいい。2年ほど前、買付でベルリンに3泊した際、ビックリしたことがある。夜中ホテルのベッドでテレビを付けるとヒットラーの映像が目に飛び込んできた。翌日はヒットラーの愛人エヴァ・ブラウンで、さらに3日目にはベルリン・オリンピックの記録映画を監督したレニ・リーフェンシュタールだった。特にドイツ終戦記念日ではなかったはずで、この国は普通にこんな番組を放送しているのだろうか、と不思議だった。それはまるで、過去の歴史を忘れまいとするドイツ・ジャーナリズムの決意のようだ。そんな思いが今のEUにつながっているのだと思う。