週に2回ほどスポーツジムに通っている。時速6kmくらい、飲み過ぎた翌日は5.5kmの負荷をかけて、とにかくひたすらマシンを歩くこと40分。これで、日々のアルコールを帳消しにしようという魂胆なのだ。でも、実際、けっこう汗が出るし、結果、気分がすっきりするのは確かだ。あとは、ストレッチで体をほぐし、筋トレめいたことをするふりをして、仕上げに風呂を浴びると、トータルで2時間くらい。
通い始めて、かれこれ20年、行くのは平日のお昼前後と決まっているから、出会う人はほとんどが定年後のオジサン、もしくは時間が自由なオバサンたちで、顔もほぼ互いにインプットしている。毎回かならず見かける人が15名以上はいる。多分その人達は、毎日通っているのだと思う。70%は女性である(この先、年寄りの、それも特に女性の平均寿命は、いったいどこまで伸び続けるのだろう)。けっこうな年寄りもいて、しばらく見かけないと「病気かな、それともひょっとすると…」などと思うこともないではないが。
彼女たちは、たいていオシャベリだ。顔なじみを見つけては、飽きることなくアレコレ話しているのが、否応なく耳に入ってくる。最近代わったばかりのジャズ・ダンスの新人トレーナーを批評したり、孫の自慢、体の不調など、話のネタはつきない。先週、いつものようにマシンで歩いていると、隣のAおばあさんと、その隣のBおばさんが目の前のテレビ・モニターを見ながら話しているのが、耳にはいってきた。それは一見、先日終わってしまった「超国民的な番組」のような、若いタレントのたわいもないゲームを見せることで、まるで、今この国ではさしたる問題は起こっていないかのような「日常」を共有させるような番組だった。
A「あの男のコ、わたしファンだったんだけど、この前週刊誌で見たら、イレズミ入れてんだって」
B「そーお、イヤーね、あんな可愛い顔してるのに」
A「アタシ、もうファンやめちゃった」
B「そりゃそ~よね~」
ぼくは一瞬「それって、倶利伽羅紋々かタトゥー、いったいどっちなんですか?」というツッコミを入れたい衝動に駆られたが、もちろんやめた。多分、どっちにしても、親からもらった大事な体に傷をつけるなんて、という決まり文句を持ちだされるがオチだからだ。
倶利伽羅紋々は、他者への威嚇のため、百歩譲って護身だったりの意味だと思う。そして、最近タトゥーはカルチャーのひとつ、もしくはファッションとして若い男女に受け入れられている。だから、一方はオドロオドロしく、片方はラブリーだったりと、見た目の判断は出来る。ただ、公衆浴場では、入り口に「イレズミの方は入場おことわり」と張り紙をしているところもあって、そういう場合の判断はどうなるんだろう。前者はダメで、後者はOKなんて言えたりするんだろうか?多分、どっちもダメってところだろう。
もうすぐ、今の政権は「集団的自衛権」にOKを出すらしい。それは、早晩、自国や同盟国を守るという理屈で、若者を戦場に送ることになる。もちろん、徴兵検査では、「倶利伽羅紋々」組も「タトゥー」組も一緒くたに合格というわけだ。