Thursday, September 10, 2009

空手黒帯有段者Yohji

Rimg0065 街でばったりROVAのOBに出会い、ひとしきり昔話。彼がROVAに通っていたのは9年ほど前になるだろうか、女子率が高い生徒の中にあって、なんとスカート状のものを穿いたりと、コム・デ・ギャルソン顔負けの先鋭的なお洒落をしていたのだが、今では結婚をし、ビジネス・スーツ姿である。そんな彼から、ちょっと気になる話を聞いた。「ヨウジ・ヤマモト」の経営が危ぶまれている、とのこと。ま、変遷が激しいモード業界、何が起こっても不思議はないのだが。
 随分前、FM番組のために山本耀司へインタヴューしたことがあった。鈴木慶一プロデュースでアルバムを出し、福岡にライブのためにやって来たときだった。幸運にも、行きつけのバーのカウンターに腰掛けて、いろいろな話を伺う機会を得た。彼がデザインした服も好きだったけど、たまたま立ち読みした雑誌での発言がすこぶる刺激的だったし、なによりその2、3年前に見たヴィム・ヴェンダース監督映画「都市とモードのビデオノート」での立ち居振る舞いにノックアウトされた身なればこそ、極度に緊張していた。
 開口一番、当たり障りのない質問をするしかなかった。「福岡へはよくいらっしゃるのですか?」と。彼の答えは意外なものだった。「別れた女房が北九州出身なので、以前、小倉へはよく来てたんですが、福岡は滅多に来ないです」。なんというのか、初対面の挨拶にしてはフランク過ぎる。いや、ラディカルでさえある。でも、おかげで随分緊張が解けた気もした。それからかれこれ1時間ほど、服や音楽の話をした。柔らかだが核心を突いた話しぶりに聞き惚れてしまい、何を喋ったのかよく覚えていない。でも、彼がいった言葉のいくつかは鮮明に記憶している。「ナチスに追われる東欧の難民が着ていた服に嫉妬する」や、「アイデンティティなんか、いらない」などなど、「デラシネ」っぽいプレゼンスだ。リアルだったのは、「一番嫌いなのは、洋服に『お』を付けること」といっていたこと。確かに、「お洋服」とは笑止である。さて、空手黒帯有段者Yohji、これから何処へ行く。