2時間に及んだトーク・セッションは、予想以上に面白かった。奥さんであり、プロジェクトのパートナーでもあるジャンヌ=クロードのウィットに富んだ話で幕を開ける。「私と彼は同い年、誕生日も一緒で、おまけに生まれた時間もほぼ同じ。もちろん、お父さんとお母さんは別だけど。」と笑わせつつ、クリストと彼女が様々なプランを一緒に実現してきたことを明かす。そしてスライドを使って、過去そして現在進行中のプロジェクトを、データを含めてかなり細かく説明。空前絶後の予算と、膨大な関係各位への果てることのない説明。2人の道はまるで、ロング・アンド・ワインディング・ロードである。そして、その資金は全てクリスト自身の計画段階での構想図を、作品として美術館やアート・ディーラー、コレクターなどに売ることによりまかなっているという。「いくらくらいで売るんですか?」との会場からの質問に、「それはマーケットが決めること、資本主義ではね。」とかわす。
ブルガリア生まれのクリストとパリ生まれのジャンヌ=クロードという二人が、拠点に選んだのはNY。世間を驚かすような作品は、耳目を集めると同時に、賛否両論の部分もあるらしい。大変なお金と膨大な時間を費やして作ったあげく、長くても2週間くらいで消えてしまう「人騒がせな自己表現」と映ってしまうのだろう。
クリストとジャンヌ=クロードは、何事につけても一緒である。ただひとつ、飛行機だけはかならず別々の便を使うという。たとえ待ち時間が4,5時間であっても、それだけは守っているとのこと。一体、なぜなんだろう。事故にあった時のことを考えてのことなんだろうか?やはり、パンフレットにサインをしてもらう際、そのことを聞くべきだったのだろうか?やはり、好奇心からの質問はせずによかったのだろう・・・。イヤハヤ、どうやら、人を巻き込むことが得意な彼らの術中にはまったようだ。