Monday, April 7, 2008

椅子と靴

椅子をお買いあげいただく際に、気を付けていることがある。例えば小柄な女性の場合などは足がちゃんと地面に着いているかを確認することなどもそのひとつ。当たり前のことのようだけど、案外御本人がそのことに無頓着な場合がある。多分、好きな椅子に座って少々興奮されているのかもしれない。特にイームズのシェル・チェアとエッフェル・ベースの組み合わせなどは注意を要する。おしり部分がくぼんでいる分、前方部が盛り上がっているので身長170cmの僕でさえ、ややもすると足が地面になんとか乗っかっている感じなのである。靴を履いているとOKなんだけど、ビルケンシュトックなんかを履いているとギリギリってところだ。ヒールがある靴を履いている女性には、できれば靴を脱いでもう一度座ってもらうことにしている。なかには、足をブラブラさせながらも購入を決める方もいるが、その際にはあえて口をはさむことはしない。キュートな女性が座る椅子にはオブジェとしての魅力があるのだから。
 
Pk22-1 しかし、住まいとなると事情が違う。キッチンの高さから始まり、コンセントの位置に至るまで、事細かなモデュールとの格闘となる。まさにコルビュジェが言った「住まいは機械である」という言葉通りなのかもしれない。おしなべて、装飾と機能がニュートラルな関係を持つことは意外に少ない。住まいとは、装飾を優先すればするほど使いにくくなる危険性をはらんでいるように思える。
 椅子好きの友人がポール・ケアホルムのPK-22という名作椅子で足に怪我をしたという。彼は「ケアホルムの椅子は日本人には向いていない」とまで断言した。聞けば、スリッパで歩いていて、PK-21の脚先にシコタマぶつけてしまい、血豆が出来たということのようである。確かに、あのPK-22の分厚いステンレスで作られた脚先はエッジも鋭い。さぞ痛かったことだろう。まさかスチール入りの安全靴とはいわないけれど、椅子暮らしが普通になった今、やはり靴履きのほうが自然な成り行きなのではないだろうか。