でも、実際にはほとんどが街歩きに使われたのかもしれない。記憶をさかのぼると、70年代、雑誌ポパイで、ヘリンボーンのジャケットとフランネル・パンツの上に羽織るスタイルが紹介されていて(1)、その組み合わせの妙に唖然としたものである。アーバン風アウト・ドア・スタイルというわけだ。でも、まねをしても、なぜかしっくりこない。街には背広の上にパーカーを羽織ったサラリーマンがたくさん闊歩していた。そうして、僕はそのパーカーの存在をすっかり忘れてしまった。
ところが、ここ十年ほど、このパーカーは、買付旅行にはなくてはならないギアになっている。突然の雨にもフードをかぶれば傘なんていらないし、極寒でも下にフリースを着れば大丈夫。おかげで、過去の買付写真を見ても、いつもシェラ姿。4色持っているのでローテーションはしてるけど、たまには洒落たジャケット姿で行きたいと思う。しかし、いざ出発当日になると、やっぱり着慣れたパーカーを選んでしまう。転ばぬ先の杖、というわけだ。
それにしても、温暖化の影響なのかこのところダウンを着るほど寒い日は少ない。どうかすると、1月か2月に2,3回着ただけで押し入れにしまってしまうようなこともめずらしくない。でも、年末の寒波到来でとても重宝させてもらった。30日のパーティーにも着ていった。久しぶりに会う友人達と過ごす時間には、なつかしい60/40の素材がピッタリだったと思う。友情も服もスタンダードが一番だ。今年も一年、息災にゆきたいもの。
(1)マガジンハウスのスタイリスト北村勝彦氏によるコーディネイトは、当時「ワイルド・シック」などと呼ばれ、その後、原宿に出したセレクト・ショップ、「リトル・アイランド」はあこがれの店だった。モデルも彼自身がやっていて、かっこよかった。