初めて"weird"という単語に出くわしたのは、90年代にプチグラ・パブリッシングから出た『weird movies a go go』という映画本。辞書によると「奇妙、変」という意味だけど、それならstrangeやbizarreがあるではないか、きっとニュアンスが違うはずだと、たまたま、その本の表紙が贔屓のピーター・セラーズだったこともあり、大いに気になってしまった。そして今回、いわばweirdを自認する街ポートランドへ行ってみて、思い当たるふしに遭遇。空港にあるレンタカー会社のカウンターでのことだ。
ひとり先客が手続きをしていた。 相手をするスタッフは丸顔にネクタイ、まるで少年のようだ。 綺麗に撫で付けた髪に小さな口ヒゲ。待てよ、 その真っ黒なヒゲがなんだか不自然、とすぐに気がついた。 少しポッチャリしたなで肩の彼は、 まごうかたなき彼女なのである。それにしても、 テキパキと仕事をこなしてらっしゃる。 しばらく待って僕らの番になった。 つくったような低音の声が芝居じみてたけれど、 契約の方はとてもスムーズに終えることができた。
ポートランドはとてもリベラルな街だといわれる。しかし、 オレゴン州全体となるとどうだろう。 ウィラメット川流域の都市部を別にすれば、 カスケード山脈から東は圧倒的に保守層。 様々な事案が常に拮抗するのが現状らしい。 たとえば同性婚だけれど、 2006年だったかいったんは認められものの、その後、 くつがえされたはずだ。知的でクール、緑に囲まれ、エース・ ホテルやスタンプタウン・コーヒー、自転車通勤の普及、 全米一治安の良い街というのは、あまりにキンフォーク・ マガジン的な見方なのかもしれない。 誰しも看過できるような異態を晒すレンタカー屋のスタッフが、 こっそり闘っている街でもあるのだ。 あのチャップリンのようなちょび髭は、単に「変」 とみなされるされることを拒否した彼女が、 自覚的に選びとったweirdな手段にちがいない。ちなみに、写真の女性はスタンプタウンのスタッフで、本文とは関係ありません。
ポートランドはとてもリベラルな街だといわれる。しかし、