ポートランドのダウンタウンから車で1時間も走るとコロンビア川 の雄大な渓谷が眼の前に広がり、 そこから内陸へ向かうと1時間くらいで州の最高峰マウント・ フッドの中腹へ着いてしまう。その間、 ポートランドでは雨だったのが次第に曇りへ、 その後少し晴れ間が、と思ったら山道は雪まじり。 天候がめまぐるしく変わる。 この季節での積雪にびっくりしたのだが、 ここは一年を通してスキーができるのだそうだ。そうそう、 ここのスキーロッジは映画『シャイニング』 の冒頭で使われているんだった。キューブリック・ ファンとしては見逃せない。実は、 あまり期待していなかった内部が、とてもおもしろかった。 1930年代にルーズベルト大統領のニューディール政策の一環で 建てられた「山小屋」は、木材、鉄、 織物などすべて地元の材料と職人を使ったローカル製。 そのどれもが、アメリカならではの骨太なクラフト感にあふれ、 ネイティヴなモチーフと、 白人開拓者のラフネスが不思議なハーモニーを奏でていた。 ところが、そこから東へひた走ると、 風景は草原から次第に乾燥地帯へと変化してゆく。 このへんまで来ると、 いかにもアメリカらしい空がズズーンと広がり、 雲の形もさまざまで見飽きることがない。「子供の頃、 西部劇で絶対見たことがあるゾ!」と、 思わず呟きたくなる景色のオンパレード。そんなドライブでは、 音楽が欲しくなる。今回は抜かりなく、 けっこういろんなCDを持っていった。 ポートランド出身で今はドイツで活動するピーター・ ブロドリックに、LA出身シュギー・オーティス、そしてヴァン・ モリソンのアメリカでのコミューン暮らしの佳作『テュペロ・ ハニー』も良かった。でも、一番聴いたのはIWAMURA RHUTAの『SUNDAY IMPRESSION』という発売前のサンプルCD。 ぜんぶの曲が1分台の小曲12曲、 全部合わせても17分のアルバムをカーステレオでひたすらリピー トモードにして聴いていた。みどり色の風景に、 ピアノの音がしっくり溶けこんでいたからだ。日本へ戻ったら、 タイミングよくそのCDが発売になった。 もちろんorganでも絶賛発売中。 ジャケットはNoritakeさんのイラストです。