4月から地元のLOVE FMで番組をやり始めた。夜8時から9時半までの放送で、”音楽と旅、ときどきデザイン”というサブタイトルを付けている。毎回、旅の話をしたり、ゲストを迎えたりと楽しくやらせて頂いている。しかし、毎週、選曲から話のネタまで、ああでもない、こうでもない、と夫婦で結構アタフタもしている。なにより、生放送なので、海外への旅行がムズカシイ。「そういう場合は収録で結構です」とも言われているが、10日ほど行くとすると、戻ってきてすぐ生放送なので、最低3週分くらいの前準備が必要となり、もっと面倒になる。だから、しばらくは近場の探索を楽しむことにしている。
そんな折、大分県は国東半島の根っこのところである野外音楽フェスに誘われ、面白そうなので行くことにした。誘ってくれたのは、もともとorganのお客さん。一人はそのフェスを主催している「カテリーナ」という古楽器を製作している一家の娘さん。もう一人は去年、九電に就職したものの「原発問題」に疑問を持ち、半年であっさり辞めた青年。ふたりは九州大学の学友でもあり、娘さんは自慢の料理で、そして青年はあぜ道の駐車スペース案内からなにからの裏方としてボランティア参加している。
その日は、天気晴朗なれど風強く、まったくの野外フェス日和だった。田んぼの中のこんもりとした森に母屋、庭に古楽器のアトリエがあり、演奏は風が吹き抜ける庭で行われた。庭だから、とてもアットホームだし、その周りではローカルの店がさまざまに美味しい食物を用意している。子どもたちは”鳥笛”をつくるワークショップや、田んぼでの凧揚げに夢中だ。着いた瞬間に「無理がなくて、いいな」と思った。演奏はまずアコーディオンをフューチャーしたパリっぽい音のRue de Valseから始まり、続いてシンガー・ソングライター安宅浩司の見事なスリーフィンガーのギターと唄。つい、高田渡を思い出しそうになったが、無頼度もアルコール度も低いところが今的なのだ。Baronくんはエノケンや、アメリカの古いボードビルっぽいパフォーマンスで会場を沸かせくれた。そして「カテリーナ」のMiraiさんとMaikaさんのユニットbaobabの登場。フィドルを使った演奏と唄は、ペンギン・カフェ・オーケストラにも通じるし、なによりケルト音楽の匂いがする。最後はTabula rasa。こちらもフィドルが活躍するが、アイリッシュ・トラッドがベースなので、とてもじっとしてはいられない。小さなステージの前にダンスの輪が広がる。ここでも子どもたちが王様だ。気がつけば、風の冷たさが増してきた。山の夕暮れは案外早いのだ。後ろ髪を引かれつつ、宿へ向かうことにした。