空港で予約していたレンタカーを借り、まずはGPSをフェリー乗り場にセット、そこから船でバンクーバー島へ向かうことにした。地図では小さな島に見えるが、実は面積は九州とほぼ同じ。中心となるのは古いイギリスの風情を残したビクトリアという街。夕方ホテルにチェックイン。明日からの「大自然探訪」に備えて早寝するつもりが、つい、やっぱりフラフラと街へ出る。事前に調べていたアンティック街は、残念ながら5時ぐらいでぜんぶ閉まっている。気が付くと、歩いている人にアジア系の人がとても多い。あとで調べてみるとバンクーバーの人口構成は中国人、韓国人、日本人、東南アジア系を合わせると35%とのこと。したがってフォー屋もある。晩飯が決まった。長時間の旅で疲れた体に、つるつる&ズズーと染みわたるヌードルは、本当にありがたい。
後日、バンクーバー都心から車で30分ほど走り、ブリティッシュ・コロンビア大学へ行ったみた。大学のロゴが入ったスウェットやパーカーに目がない僕が目指すのは生協。英語ではシンプルにブックストアである。ところが、あまりに広大な敷地なので迷ってしまい、歩いている東洋系の学生さんに英語で声をかけてみた。すると、自分もちょうどそっちへ向かうので、案内しましょうとのこと。お言葉に甘えて、彼と一緒に歩き出すと「どこから来たんですか」と尋ねられ、「日本です」と答えたら「では日本人ですか、ぼくもそうです」と返答され、お互いニッコリ。それから、日本語で少し話をしてみると、半年間の語学留学らしく、近くにホームステイしているとのこと。一緒にいた同じくアジア系女性もてっきり日本人と思ったら韓国人とのこと。日本にいると、ギクシャクした印象を待たされてしまう日韓関係は、ここにはなかった。
いつ頃からか缶バッジを集め始めた。だから、僕のジャケットの胸にはたいていお気に入りのバッジが付いている。今回は、たまたま、その中でもシンプルなデザインで、多分1970年代アメリカのものを付けてカナダへ行った。”VOTE” とあるから、なにかの選挙のアピールのためだろう。”L.I.U.”は、個人の名前の略と思えないでもないが、労働組合系のパーティー(政党)のことかもしれない。今回の旅では、このバッジのおかげで、歩いていると結構声をかけられてしまった。おおむね「誰を応援してるんだ?」と話しかけてきて、僕は「さー、誰だろうね」と応え、笑顔で別れる。たったそれだけのことで、この街が気に入ってしまうっていうのは、ナイーブすぎるのだろうか。