Thursday, March 27, 2008

土足はタブー?

Slippa 一体、一家には平均何足くらいのスリッパがあるのだろう。家族各々はもちろん、お客さん用、トイレ用、果てはベランダ用のサンダルまでいれるとかなりの数にちがいない。ピカピカにワックスがかかったフローリングの床をスリッパで歩き、あやうく滑りそうになったことがある。医者、それも歯医者には今でも靴を脱いでスリッパ履きのところが多いような気がする。不特定多数の人が履いたスリッパは、くたびれていて、正直清潔ではないだろう。なにより、靴を脱がされるというのは自分が無防備になり、足が地面に着かない感じがして不安感が増してしまう。多分、場所柄もあって、清潔感を出そうとしているのかもしれないけれど、僕には逆効果に思えて仕方がない。そういえば、以前FM番組をやっていた時、スタジオに入る前に、靴を脱いで、モコモコしたピンクの象さん形をしたスリッパに履き直さなければならなくてかなり閉口したことがあった。理由を尋ねると「精密機械が多いので」ということだったけど、じゃ海外の放送局では機械の故障がそんなに多いのだろうか。
 日本には「土足」という、まるでタブー視された言葉がある。本来の意味を知りたくて、本屋で国語辞典を開いてみた。何種類かを覗いてみたが、おおむねふたつの意味が載っている。「汚れた足」と「靴のまま」である。確か小学館版は①「足」②「靴」で、三省堂版は逆に①「靴」②「足」だったかな。僕は土足とはもともと「汚れた足」のことだったと思っている。だって、靴が履かれるようになる明治時代よりずっと前から「土足」という言葉はあったはず。時代劇で見るように、わらじ履きで汚れた足を、土間に座って洗い桶できれいにして上がる。いわば、他人の家におじゃまをする時の当然の礼儀だったわけである。ところが、靴が普及して、足そのものは泥で汚れる心配が無くなった後も、「外=汚れ、内=神聖」と見る日本的ストーリーだけが残ったのではないか。靴に付いた泥は落とすことが出来る。にもかかわらず、足が靴へとほこさきが変わっただけで、生活はそれなりに洋式化したにもかかわらず、玄関では依然として「ミソギ」めいたことがおこなわれているようにも見える。
 もちろん、人はそれぞれのストーリーを持って生きてゆくわけで、色々な考えがあって当然。でも、僕のようにすべてに渡って面倒くさがりな人間にとっては、様々な場面で靴を脱がされ、スリッパを強制されることはちょっと迷惑でもある。なにより、なんとなく慣例に従うっていうのが嫌いで、つい自分にとっての「ENOUGHな暮らし」を探してしまうのだろう。
 今、organから徒歩15分にある築30年のフラットの一室を土足対応型にリ・モデル中である。ENOUGHの仲間と一緒に様々なプランを考えた結果、やはり床を抜くことに決めた。靴の足音を極力階下に響かせないためには、従来ある床ではなく、コンクリートに直に敷物を敷く工法がベターだと判断したからである。リ・モデルのケース・スタディとして4月のデザイニング展で公開する際に「土足って案外簡単なんだ」と、思ってもらえればいいな。