Saturday, February 7, 2009

イノウエ・コウヤ

Rimg0018 井上荒野は作家、井上光晴の娘さんである。ずいぶん前に観たドキュメント映画『全身小説家』で井上光晴という人の見事な嘘つき人生ぶりに感心してしまったことがある。彼の小説はちゃんと読んではいないが(というか映画で満腹だった)、娘さんの小説なら読んでみたいと思った。なにせタイトルが『ひどい感じ 父・井上光晴』なのである。あの父にしてこの娘かも、という勝手な期待感もあった。丸善に行き、イノウエ・コウヤの在庫を検索して欲しいとカウンターの女性に伝えた。あいにく探していた本はなかったが、単行本3種、文庫本なら各出版社から数冊あるという。目指していたものがないのなら、いっそ文庫本にしようと思い案内されるままそのコーナーへ行った。結局3冊があったのだが、迷うことなく「しかたのない水」というのにした。タイトルに惹かれた。表紙を見ると、漢字名の下に、アルファベットでINOUE ARENOとある。カウンターではっきりと「イノウエ・コウヤ」といった時の女性の反応が、いまひとつはかばかしくなかった理由が判明した。コウヤじゃなくてアレノとは、まったく日本語というやつは妙にトリッキーだ。内容はスポーツクラブを舞台に「現代の不毛さ(なんか昔っぽい言い方ですが)」を描いたオムニバス小説で、なかなか面白い。というか、同じようなクラブ仲間として身につまされるわけです。実際、スポーツクラブとは魔か不思議な場所なのだ。

Friday, February 6, 2009

「Bで行け!」という声

Rimg0010-1 かれこれ15年以上になるだろうか、歩いて3分という近場のスポーツクラブに通っている。といっても、カナヅチでおまけに自転車にも乗れないというスポーツ音痴だから、フィットネスジムといったほうがいい。最初は「ダマされたと思って」行ったのだけれど、今でも週2、3回のペースで続いている。映画『アニーホール』の中でウディ・アレンが言っていた「カリフォルニアの光は体に悪い」というセリフを信用していたくらい、いわゆる健康志向には懐疑的だったはずなのに、今となっては40分間マシーンを歩いてうっすら汗をかき、ベルトがブルブル震える機械に身を任せて体をほぐすのがパターン化してしまっている。時間帯は、以前は休日の午後だったが、最近は後の昼飯がおいしいから平日の午前中に行くことが多い。ハマッた理由は、ひとりになれるからだ。体を強制的に運動状態に置くと、日頃クヨクヨ考えている諸問題が、アッサリと自己解決してしまうような気がするのだ。例えば、AとBという選択肢で悩んでいるとする。Aのほうが無難なのだが、実はBのほうが自分の本意だとしよう。日常の中で考えていると、なんとなくAに押し切られるのだが、汗をかいている瞬間には「Bで行け!」という声が聞こえてしまうのである。『長距離ランナーの孤独』という映画を観たことはないけど、マラソンをしている時に似ているのかもしれない。他者とのコミュニケートはもちろんだが、自分とのダイアローグが案外一番難しい。自問自答とはモノローグのはずなのだけれど、汗をかいている肉体との関係はダイアローグ的なのである。つまり、5年前は負荷32kgでいけた腹筋マシーンが、今や23kgがいいとこだということを知るのは、体が実は他者だという感覚に近い。汗をかきつつある肉体と、ストレスを被った精神が会話を交わす時、勝者はどっちなのか。実は、日頃の酒やタバコに悲鳴を上げる肉体の反逆なのかもしれないが、老いても細胞分裂を起こしていることだけは確かだ。

Tuesday, February 3, 2009

ジェンダー

Rimg0082 おととい、野見山さんと飲んでいてジェンダーの話になった。と思ったら、昨日の朝刊「アジア発日本への手紙」に興味深い記事が載っていた。タイ政府は2002年に「ホモセクシュアルは精神疾患ではない」との見解を出していて、官僚や軍、一部の企業を除けば、ゲイには寛容な国といわれている。もちろん、差別がなくなったわけではないようで、ある高校では男女トイレの他にゲイ専用に第三のトイレがあるとのこと。男子からはからかわれるし、女子からは気味悪がられるのが理由ということらしい。また、チェンマイの僧侶を調査したところ二割がゲイだったとのデータもあり、タブー視されていた問題だけに波紋が広がっているとのことだった。今月末、一年ぶりでチェンマイを訪れる身としては、ちょっと気になる話題なのだが、タイでは親孝行のために短期の出家をする男子も多いと聞いている。一人前として認められるための通過儀礼として形骸化しているとすれば、僧侶を特別視するのも変な話だろう。ところが、今朝の朝刊でアイスランドに新しい女性首相が誕生し、彼女がレズビアンであることを公言しているという話題が載っていてビックリした。アイスランドと言えば、一時マイケル・ヤングが住んでいたり、ビヨークやMUMなどを生み出した国で、一度は行ってみたいリベラルな可能性に溢れた場所だと思っていたからなんだか嬉しくなってしまった。