しばらく途絶えていたハワイアン・エアが去年だったか再開したおかげで、福岡から直接ホノルルへ行くことが出来る。自宅から空港までタクシーで20分、そこ
から8時間半の楽園である。飛行時間はもちろん短いに越したことはないが、前回のマウイ島みたいに、成田での長い乗り継ぎ時間がないのが、なにより嬉しい。その時は、古い友人を訪ねることが目的のひとつだったのだけれど、今回はハワイ島の田舎町を訪ねながら、ビッグ・アイランドをレンタカーで走り
回るつもりだ。もちろん、途中で見かけたアンティック屋をしらみつぶしに襲うことは、言うまでもない。
初めての機内に乗り込み、席に着くと同時に気がついたことがある。前席シートの背に普通ならあるはずの個人用モニター画面が見当たらないのだ。ということは、そこかしこに設置された画面に向かい、せ~のでみんな同じ映画を観るということなのか? うーん、かなりローテクだが、楽園に向かうのだから文句は言えないのだと、いつものように酒の力を借り、うたた寝を決め込む覚悟をした。ところが、安定飛行にはいった途端、全員にiPadが配られた。なるほどこれならクッキリと好きな角度で自由に観ることができて案外悪くないかもしれない。映画のプログラムに『ホノカアボーイ』があった。今回はじめてホノカアを訪れる身としては下調べが必要なので、さっそく観ることにする。以前レンタルでなんとなく観たことがあるのだが、「倍賞千恵子はオバサンになってもラブリーだ...淡いミントグリーンの建物がなんてノスタルジックなんだろう」などと思っているうちにウツラウツラ、意識が遠のいた。
目が覚めて時計を見るとホノルル到着まであと2時間強。さてもう少し時間を潰さねば、と今度は試しに"ハワイの仏教"を扱ったドキュメントを選んでみた。するとこれが面白くて、しばし目が釘付けになってしまった。日系人のために移入された仏教は、その人口がハワイ諸島全体の40%を占めるようになるに従い、独自の発展をとげたようだ。人々の寄付により、各地に建立された寺は当初は簡素なバラック建てだったが、徐々に立派になり日本の渋い寺とは違う奇異なデザインになる。それは「葬式と法事の為だけ」という形式だけの仏教ではなく、移民のキビシイ生活に寄り添う「ハワイ独特の仏教」へ変化したということか。この島々には先住民であるポリネシア系をはじめ、様々な人種が移民、入植している。イギリス人クック船長に発見され、その後ポルトガル人、中国人、フィリピン人、そして日本人などが上陸した太平洋のど真ん中にポッカリ浮かんだ火山島は交通の要所でもある。そしていわずもがな、ここが、まぎれもなくアメリカの一部であることを、着陸そうそう、否応なく認識させられてしまう。